2012年03月28日

「特別なエコカー」から「身近なエコカー」へ

「特別なエコカー」から「身近なエコカー」へ

マツダCX-5。2月16日に発売した新型多目的スポーツ車(SUV)です。
受注が約1カ月で計画比8倍の8000台。

同等クラスのSUV車は車体価格、税金などの諸経費を含むとが300万円くらいするのであまり売れないということですが、沖縄県内でも数十台が売れているとのこと。因みに先行販売された某メーカーのSUVは、数台しか出ていないということでした。

マツダでは、当初CX-5は、ガソリン車が方が売れるだろうと予測していましたが、ふたを開けてみると、逆に7対3の割合でクリーンディーゼル車が売れています。

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休みに販売店に行きましたが、多数のお客さんが来店し、CX-5への試乗は待ちの状態でした。試乗ができませんでしたが、ガラガラというディーゼル車特有のうるさいエンジン音はびっくりするくらい小さくなっていました。黒煙もほとんどなし。

機会があれば実際に試乗してみたいのですね。 

ディーゼル車というと、トラックなどの商用車を思い出します。
「うるさい、黒煙、走らない」という印象が強かったのですが、最大出力も154ps~175psあり、ホンダCR‐Vが150ps~190ps、日産のデュアリスが137psなので、遜色がありません。ようするに「走る」ということです。

マツダCX-5は、次世代環境技術「スカイアクティブ」を採用し、これまでのディーゼル車の「うるさい、黒煙、走らない」のイメージを見事に払拭しています。


興味を持ったのは、マツダのエコカーに対する考え方です。

マツダのホームページによると、2007年に「サステイナブル“Zoom Zoom”宣言」し、2015年までに世界で販売するマツダ車の平均燃費を30%(2008年比)向上させる計画を発表しています。

販売するマツダ車全車、平均燃費を30%向上させることは容易ではありません。
しかし、あえてそこにチャレンジしたのです。

マツダの「マツダ車全車、平均燃費を30%向上させる」ということは、エコカーへの見方を大きく変える考え方です。

エコカーというと、ハイブリットであるトヨタのプリウスを想起しますが、特別な技術で開発された車というイメージがあります。先進的な技術は日本が誇るべきですが、如何せん特別な車には特別な人しか乗れません。
米国では映画俳優、有名人がプリウスに乗っているニュースが流れました。


マツダは「エコカーは一部の特権的な車ではない」と明確にしていることです。
トヨタのプリウスにせよ、日産のリーフにせよ、電気デバイスを取り入れることで車の価格が高くなり、エコカーと内燃機関の大衆車の間にはラインがあります。

内燃機関、エンジンで走る車が圧倒的多いという車市場からみれば、ハイブリット、電気自動車のエコカーは一部にしか過ぎません。

マツダは、三角形でいえば、底辺に近い圧倒的なボリュームゾーンである内燃機関、エンジンで走る車をエコカーにすべきだとテーゼしているわけです。

エコカーに対する考え方が、トヨタとは真逆なのです。
どちらが正しいとかではありません。

ただ、圧倒的なボリュームゾーンである内燃機関、エンジンで走る車をエコカーにすることが、自動車会社としての社会的責務を実践していると感じます。

マツダは、圧倒的に多い、内燃機関、エンジンで走る車をエコカーにすることが、社会的責務として、エンジンというベース技術をブラッシュアップすることに着目しています。

マツダのエコカーに対する考え方を形にしたのがビルディングブロック戦略です。
ビルディングブロック戦略のサブタイトルは「普及してこそ貢献」とあります。

「普及してこそ貢献」は、普及範囲が限定される現在のエコカーへのアンチテーゼとも受け取れます。

エコカーは特別な車ではなく、一般大衆車をエコカーにすることが、大きな社会的貢献であることには異論はないと思います。

「特別なエコカー」から「身近なエコカー」へ
※マツダHPより

マツダのHPにビルディングブロック戦略について書かれています。

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クルマの基本性能である「ベース技術」を優先的に改良した上で、段階的に減速エネルギー回生システムやハイブリッドシステムなどの電気デバイスを導入する「ビルディングブロック戦略」を採用しました。

これは、一部の環境対応車に大きく依存することなく、すべてのお客様に、「走る歓び」と「優れた環境安全性能」をお届けすることで、効果的にCO2の総排出量を削減するアプローチです。ベースとなる内燃機関の効率を向上させることにより、ハイブリッド化する際も、付加するモーターやバッテリーなどの電気デバイスは小さくてすみます。この道筋を辿ることで、マツダらしい走る歓びに満ちたハイブリッド車の実現が可能になります。

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内燃機関、エンジンにも伸びしろが、まだまだあるということを、マツダは真正面から向き合い、取組んだのが次世代環境技術「スカイアクティブ」です。




トヨタのハイブリッド技術のプリウスも凄いですが、マツダのビルディングブロック戦略は、本来持っていた日本のメーカーらしい考え方かもしれません。

日本企業の素晴らしいところは、限界に挑戦する技術魂があることです。

ガソリンなどを燃やす内燃機関は、100年前からある既存の技術です。
エコカーにするには、内燃機関は限界があるから、新しい技術として電気デバイスを導入したハイブリットにすることも、一つの道です。それがトヨタのプリウスです。日産は電気自動車リーフ。

それはそれで素晴らしいことですが、100年前からある既存の技術の限界に挑戦することは、ある意味ハイブリットを開発するより、難しいのではないでしょうか?

あらゆるメーカーの技術者が挑戦したわけですから、「もうやりつくした」とサジを投げることは簡単です。マツダは、そこにまだまだ技術的改善の余地があると次世代環境技術「スカイアクティブ」を開発したのです。

内燃機関の既存技術を進化させれば、電気デバイスへの依存は極力小さくできます。

ということは、プリウスを超えるハイブリットカーを生む技術ができるということが容易に想像できます。車両価格も安く提供できるということになります。エコカー、ハイブリットカーは高いというイメージを払拭できます。

「普及してこそ貢献」をテーマに掲げるマツダ・ビルディングブロック戦略。戦略に基づいた次世代環境技術「スカイアクティブ」により、一般大衆車がエコカーになることの見本を示してくれました。

つまり、他の自動車メーカーも内燃機関、エンジンで走る一般大衆車をマツダ同様にエコカーへ変えなければなりません。

つまり、マツダ車に倣っていけば、街中で走る車すべてが、以前と比べて30%も燃費が向上したエコカーになるわけです。

「特別なエコカー」から「身近なエコカー」へ。

パラダイムシフトを起こそうとするものであり、
これまでのエコカーへの概念を変えるのが、マツダのビルディングブロック戦略です。

一企業の戦略ではなく、通産省、環境省、国交省などが採用すべき国の政策レベルのJapan戦略とも言えます。

マスメディア、我々消費者も、ビルディングブロック戦略もっと評価してもいいのではないでしょうか。

社内公用語を英語にするとか、どれだけ海外展開し規模を拡大したのかという欧米流グローバル戦略がもてはやされていますが、小手先の企業戦略ばかりです。

マツダ・ビルディングブロック戦略こそ、日本メーカーらしい琴線に触れる企業戦略ではないでしょうか。日本人の創造力があってこそ成し得ることができる日本らしい戦略なのです。

「特別なエコカー」から「身近なエコカー」へ。

「特別なエコカー」は、技術者の視点からの発想。
「身近なエコカー」は、消費者の視点からの発想です。

かつて、本田宗一郎は、消費者の視点から、大衆的なバイクである「スーパーカブ」を開発しました。

本田宗一郎は、技術者でありながら、消費者の琴線が読める日本流経営者でした。

マツダ・ビルディングブロック戦略に、本田宗一郎のにおいを感じました。
同戦略は消費者の琴線が読めないと組立てられない日本流企業戦略です。

第三のエコカーの道とも言えますが、これが本来の日本流エコカーの姿であり、日本の自動車メーカーが取るべき方向ではなかったのかとおもいます。

次世代環境技術「スカイアクティブ」、マツダCX-5の好調な販売へ目が行きがちになりますが、マツダ経営陣、技術陣の日本流経営、日本流マーケティングに注視していくと日本流経営の在り方が見えてくるとおもいます。


マツダ・ビルディングブロック戦略に日本人の創造力は凄いなぁと改めて感じると同時に、日本人であることを誇りに思いました。


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