2012年01月06日

ドミナント出店で売上が増加する顧客心理

ドミナント出店で売上が増加する顧客心理

セブン‐イレブンの戦略の高密度多店舗出店(ドミナント出店)。

一定地域に店舗を集中的に出店することで同業他社への優位性を確保し、物流、店舗管理などコスト削減、効率を高めるマーケティング戦略の一つです。

業界ではドミナント出店を効率という側面から評価する声が多かったのですが、鈴木氏は、効率だけを追求したからではなかったのです。

顧客心理(琴線)をよく理解するからこそドミナント出店だったのです。

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『鈴木敏文の「統計心理学」』(勝見明著・プレジデント社)に、ドミナント出店の本質が書かれていました。

「仮に半径10キロ圏内にコンビニが一軒しかない場合、店の経営者は、圏内全部が自分の客だと考えがちです。そして、圏内に同じチェーンの店が出店すると、客が減るのではないかと心配したりする。それは大きな誤解です。

お客の側は、周りに同じセブン‐イレブンが何軒もあることで認知度を高め、これは便利そうだと思うようになり、実際に、店を使い始める。

右に行っても、左に行っても、近くにセブン‐イレブンがあると心理的にどんどん身近になり、冷蔵庫がわりになっていく。

その証拠に、われわれが新しい地域に出店したとき、最初の三~四年の売り上げはさほど高くありませんが、店舗密度があるところまで達すると、急速に伸びていきます。関西への進出はまさしくそのパターンでした」。

1990年、セブン‐イレブンは関西へ初進出したのですが、競合のローソンが当時府内に800店あり圧倒的に強く、苦戦しました。

ドミナント出店を展開し、店舗数が300店を超えた時点で、集客力が急速に高まり、平均日販も関西地区でトップになったのです。

コンビニエンスの商圏は、都市部半径300メートル、住宅街500メートル、郊外1000メートルといわれています。

ドミナント出店は、意地悪な見方をすれば、コンビニエンスチェーン本部が出店数を増やす方便という見方もできます。

しかし、ドミナント出店はチェーン本部の都合の良い論理ではなく心理(琴線)を知り尽くした理にかなった日本流マーケティング戦略なのです。

臨界点を超えるといっきに、ドドーッと流れが変わる現象が起きます。なぜ臨界現象が起きるのか。顧客心理(琴線)がどのような変化が起きるのか。

鈴木氏は、「地域に固まって店舗があることで、心理的に身近になる」と説明しています。なぜ、身近に感じるのか? それは、情報量が増えるからです。

私が考案した琴線の法則―「量の法則」があります。情報量が増えれば、売れるという法則です。

人は、接触する回数が単純に増えると好感度、印象が高まるという心理(琴線)があります。

特別に興味を持たなくても、何度も接触することで、だんだんと好感度が増していく心理現象ですが、身近にそういうことはよく起こっています。

例えば、芸能人がマネージャーと結婚する報道を耳にする場合があると思います。スターだから同じ芸能人同士であればつり合うし、何となく納得するのですが、マネージャーとは不釣り合いな感じが否めません。

量の法則を理解していれば、毎日接触するマネージャーと芸能人が恋愛するのもわかります。

接触する時間が長いので、おのずと好感度が高まって、恋愛に発展してしまうという心理が働くというのも不思議ではありません。

話がそれましたが、ドミナント出店で一定地域に集中させることで、その地域のお客さんは、セブン‐イレブンに出会う機会がどんどん増してくるのです。

見慣れなかったセブン‐イレブンがだんだん身近になり、好感度がどんどんアップし、店舗へ足を運ぶ機会が増えるわけです。

ドミナント出店の背景には、そのような顧客心理を見抜いていた鈴木氏がいるんですね。
単純に合理的、効率的な思考でドミナント出店を考案したのではないのです。


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