2008年12月17日
合成の誤謬
「合成の誤謬(ごびゅう)」
意味は「個別や個別企業などのレベルで妥当することが、
社会全体の大きなレベルでは妥当しない」ことです。
例えば、貯蓄。個人レベルでの貯蓄すると行為は、
社会全体の貯蓄を増やすことに繋がらない。
普通に考えれば、貯蓄を増やせば、
社会全体の貯蓄を増やせると考えると思うのですがのが、実際はそうならない。
個人レベルで貯蓄促進→消費を弱める→有効需要を減らす→
経済活動水準の低下→所得水準の低下→社会全体の貯蓄は減少
最近、読んだ野村総研のリチャード・クーさんの「日本経済を襲う二つの波」
一つキワードは「合成の誤謬」。
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日本では、ミクロと、マクロのメカニズムの違いが
よく理解されていない、ことを痛感しました。
クーさんは、現在、日本の経済は、企業は利益の拡大より債務の最小化にシフトしている為、
企業の資金需要が減るバランスシート不況が続いていると言う。
実際、借金苦に陥った経営者は、借金拒絶症になり、
積極的な投資をしなくなることを目のあたりにしたことが度々あった。
バランスシート不況の世界では通常の逆の現象が起きる。
例えば、一般家庭では家計の赤字を減らす為に日々の支出を減らす。
が、バランスシート不況下では、
赤字を減らす為に財政再建に舵を切ると結果、税収が減り財政赤字が増える。
「日本経済を襲う二つの波」のP241のグラフは非常に分かりやすい。
橋本政権下の「増税」は赤字が倍増させ
小泉首相は「国債発行額を30兆以内に抑制」と公約し、結果的に景気後退、株価安につながった。
どうしようもなくなった小泉首相は、
03年に公約を撤回すると、
税収が増え赤字が減ったと、財政再建の失敗をクーさんは指摘する。
1000億円の損失を出した石原知事の新銀行東京も、
資金需要が減っているのに、
無理やり融資残高を増やそうとしたことに起因していると言う。
クーさんが言われるように、民間がお金を使わない、資金需要がないバランスシート不況の中では
財政出動、積極財政が必要だと想います。
ミクロではあるが、中小企業の資金需要を増やすには、
金融機関と企業の信頼関係が重要で、いっしょになって企業再生していく仕組み作りが必要だと思います。
小泉首相が「国債発行額を30兆以内に抑制」と公約した結果、
景気が後退し、税収が減り、貸剥がしが横行しました。
当時、東京で開催されたある金融シンポジウムに参加し、
多摩中央信用金庫が企業といっしょになって企業再生していく仕組み作りに感心しました。
立教大学経済学部教授の山口義行氏の主張も面白いし、腑に落ちました。
そのシンポジウムのリポートを
2003年に新聞に投書しました。↓
望まれる相互扶助の金融環境づくり「people helping people」
「地域が変わる!今こそ望まれる金融環境づくりを―行政主導の金融再編ではなく、貸し手、借り手がつくる金融新時代―」2月6日(水)東京で行われた「金融シンポジウム」(東京都信用金庫協会、東京中小企業家同友会共催)に参加した。
約80名の参加者があり、パネリストは、山口義行氏(立教大学経済学部教授)、由里宗之氏(中京大学商学部助教授)、大神田忠弘氏(多摩中央信用金庫常務理事)、田山謙堂氏(株式会社千代田エネルギー会長)。
経済活動をする上で現実的な地域金融環境はどうあるべきか、中小企業の視点からの考察は目からウロコで、2点報告したい。
一つは、不良債権処理問題。
山口義行氏は、小泉内閣が行っている不良債権処理はさらに不良債権を生み、銀行の自己資本率を減らし、結果的にデフレ対策の逆効果しか生まないと指摘する。
例えば自己資本80億円、資産1000億円であれば、自己資本率は8%になる。仮に10億の不良債権を処理すれ(自己資本80億円-10億円)÷(資産1000億円-10億円)=自己資本率7.07%になる。自己資本率を8%に戻すには分母の資産を115億円減らさないといけなくなる。
そうなると貸しは剥がし、貸し渋りがますますひどくなる。日銀が資金を銀行に供給しても、銀行は自己資本率にしばられ資金が市中に還流しない。
不良債権処理の根本は過剰債務であり、リスケジューリング(債務再構成)を中小企業にも適用し過剰債務を減らし、企業再建策を講じることが中小企業の活性化につながるというのが山口氏の見解である。詳しくは「誰のための金融再生か」―不良債権処理の非常識・山口義行著・ちくま新書、をご一読いただきたい。
もう一つは、地域金融機関のあるべき姿について。
米国の金融業界に詳しい由里宗之氏は、中小の地域金融は相互扶助組織であると指摘する。
米国のコミュニティ銀行業会では、相互扶助が有効に機能しており、由里氏はドナルド・メンゲドス米国銀行協会会長の「(開拓時代からネットバンキングの今日まで)コミュニティ銀行業は実は少しも変わっていない。それはいつも、人々が人々を助ける(people helping people)営みなのだ」(2002.5金融ジャーナル)を引用して、地域金融が原点に戻り、借入人の性格や金融役職員との信頼関係が、貸し倒れの程度に影響を与えることから地域金融機関の自己査定を金融監督当局が尊重することを提起した。
日本の企業の多くは中小企業である。政府・金融監督当局は、地域金融機関と中小企業を大企業、大手銀行といっしょにせず、地域金融機関と中小企業の相互扶助的な実態に即した金融環境づくりに協力することが必要である。
地域金融機関が中小企業との信頼関係を再度構築し支えることが中小企業の成長につながり、地域経済を活発にし、しいては日本経済再生につながる。
クーさんはP219で、「合成の誤謬」について下記の様に書いています。
つまり、お金は銀行に入っているけど、借り手がいなくなってしまうため出ていかない、という事態が発生するのである。そうなると、家計部門の貯蓄総額と企業の借金返済分の合計額が毎年、日本経済の所得循環から漏れることになり、それと同額の有効需要が毎年減少することになる。
毎年毎年、前途の合計額だけ総需要が減少したら、景気はスパイラル的に悪化する。個々の企業や個人がそれぞれ正しいと思う行動を同時にとった結果、全体として大変な事態を招くことになることを「合成の誤謬」と言うが、この合成の誤謬こそが、過去15年、日本の経済が直面したデフレ圧力の正体であった。
つまり、合成の誤謬を理解せず、
根本的な問題の把握が出来ていない今の日本は不幸な状態だと言えます。
問題解決を図るには、問題の本質を掘り下げ、そのメカニズムを解明し、
打開する処方箋が必要です。
リチャード・クーさんの「日本経済を襲う二つの波」を読むと
先入観を持たず、素直に現象を受け止め、多くの人々の幸福を願う利他の発想を感じます。
「日本経済を襲う二つの波」お勧めです。
ありがとう!
Posted by 伊敷豊 at 19:09│Comments(0)
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