2011年12月24日

琴線を読み復活した旭山動物園

琴線を読み復活した旭山動物園

北海道旭川市にある旭山動物園。

2004年には年間145万人も訪れ、
「パンダのいる上野動物園を入園者数で上回った」が枕言葉になるくらい
メディアでも取上げられ日本一有名な動物園になりました。

ある有名な経営コンサルタントの経営本に、
旭山動物園へ経営者の一団を引き連れ訪れた話が書かれていました。

どうすれば集客をするかテーマに議論し、
その経営コンサルタントは自分の案を自慢げに披露していました。

「コンサートなどイベント」を開催することが集客のポイントだと、いうことでした。

ペンギンの行進を指していったのでしょうが
あまりにも、ありきたりで、的外れな答えに、噴飯ものでした。

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ツアー参加料は高かったと思いますが。

現場を知らないマーケティングの素人が、経営コンサルタントとして
マーケティングを指南することに、日本の経営者はある意味、
寛容で、平和で、暇だと感じました。

さて、私もちょうど北海道に行く機会があり、
どういう動物園か見に行きました。

驚きの連続でした。
まず驚いたのは、市街地から結構離れていること。
旭川駅からバスで40分と交通の便も悪く決して恵まれたロケーションではありません。

日本一有名な動物園だから施設もさぞかし立派と思いきや、
入り口から見渡した動物園全体の印象はなんとも普通の田舎の動物園という感じでした。


全国一有名な動物園になった旭山動物園ですが、
80年代後半、全国の動物園が衰退する中、
ご多分にもれず旭山動物園も入園者数が減少しました。

96年には26万人まで落ち込み、閉園の噂が出るなど危機感がありました。

そこで、飼育係全員でアイデアを語り、
夢を語り合ったそうです。

試行錯誤し現在の形になったのでした。

旭山動物園を復活させたのは、
「世界一の動物園」にしようと夢を語り一丸となって取組んだこともそうですが、
日本流マーケティングの肝である「琴線を読む」ことを実践したからです。

それはワンポイントガイドでした。

当初、ワンポイントガイドは動物と入園者の距離を縮めるため、
飼育員が自分の担当する動物を入園者へ向けた解説ガイドでした。

初めは飼育係から不満もあったようですが、
ワンポイントガイドは、入園者の琴線を知るきっかけになったのでした。

当時園長であった小菅正夫氏は、
『「旭山動物園」 革命』の中で次のように証言しています。

「大人が知っているレベルは、子どものそれとさほど変わらないということもわかった。だから、子どもに面白いことを話せば、それは大人にも興味深いものだということも発見だった。

さらに、一般の人が、動物のどこに興味を示し、何に関心を示さないかについても、実際に面と向かって話してみることで、よくわかった。不思議だと思われるかもしれないが、本当にそうなのだ。飼育係は同じ業界の人とはよく話すが、一般の人とはあまり話さないから、本当にそういうことは知らないのだ。

飼育だけをするのではなく、入園者に語りかけてみる。それが、いわば市場調査のようなものになった。動物のことをよく知っている飼育係が、入園者は何を知りたいと思っているかということもつかめた。あとはそれをマッチングさせればよかった。」


入園者の琴線を読むことができれば、
後は、感じたことを具体的に形にすればいいわけです。

ワンポイントガイドが、
琴線を読むことに大きな手助けになったことは間違いありません。

ワンポイントガイドによる発見は、まさに日本流マーケティングそのものです。

日本流マーケティングには、非言語(超言語)的能力は欠かせません。

先程も書きましたが、非言語(超言語)的能力を体得するためには
内観することが必要です。

小菅氏をはじめ、動物園スタッフは閉園の危機が訪れることで
必然的に内観をすることになったのです。

96年に入園者が落込み、閉園がささやかれ始めた頃、
「動物園とは何か」「動物園とは何をするところなのか」
「われわれは何をしなければならないのか」
「動物たちを通して何を見せ、何を訴えるべきか」
「動物たちに何をすべきか」と小菅氏の著書にも書かれていました。

小菅氏、スタッフが内観することにより、
共感力、洞察力などの非言語(超言語)的能力が高まり、
更に、深い部分にある入園者の琴線を読むことが小菅氏をはじめ飼育員の多くができるようになったのです。

入園者だけでなく、動物の琴線も読めるようになることで、イキイキとした動物の行動展示に繋がったのでした。
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